寒くない

冷え症のため、漢方医のところに行って、「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」を処方してもらった。
漢方と言っても、別に煮出して飲んでね、て言う感じじゃなくて、顆粒が入っているスティックタイプだった。

苦いよー不味いよーと脅されつつ飲んだが、その通りに苦かったが、ちょっとだけ甘味も感じられて、もしや?と期待しつつ1週間が経ったころ、夫の親族の家に家族で遊びに行った。

川原の土手の近くのその家は、毎年正月の挨拶に行き、正月の食事を皆でする。
その後は、子供達を遊ばせるために外へ行って、凧を上げたりする。身体が冷えるのを耐えられなくなるまで外で遊んで、戻ってきたらそれを切っ掛けにお開きにする。今年もそれをしに行ったのだ。

恒例の食事の後に外で遊ぼうと子供達は外に出て行ったが、私は最近は、寒さに堪えかねて外には行かず、夫の親族と炬燵で話をしながら子供達の帰りを待っていた。

日が少し陰ってきたな、と思って外に出たが、まだ外は明るかった。でも、子供達をそろそろ呼び寄せようと、声をかけなくては、と思って庭先迄出ていった。

上着を着たほうが…とも思ったのだが、そのまま庭先から表の道まで出て、その先の空き地へ向かった。

子供達が日陰になっている場所で遊んでいて、いかにも寒々しかった。風も出ていた。強く、冷たい。

大きな声を張上げて、手を振った。
子供達はこちらに手を振り替えして何かを応えたが、集まるまで待つのが面倒に感じて家の戻ろうかとも思った。が、そのまま、何となく土手の方まで歩いて行った。

土手に近づいて、それを登ろうと舗装された階段に進んだ。
益々風は冷たく吹いてくる。
堪えきれなくなって、走ってみた。走って土手の上まで駆け上がる。
夕方に差し掛かった西日の眩しさの中、土手の尾根を風に向かって走った。
風に吹かれながら走っていく内に、小さな広場迄来て、そのままUターンして元の土手の道を戻った。
耳にあたる風のせいで、きっと冷たく赤くなっているだろう。耳が痛い。でも耳を風から守る為に手で覆う為にポケットから手は出したくない。寒い。
口からは何度も寒ーい、とこぼした。

寒い寒いと言いながら冷たい風の中を走れた。冬だ。久し振り。
薬が効いているんだ。