ダッフルコート 3着

年寄の冷や水…ではないな、
若作り…と言うか、
趣味が悪いと言うか、

服でフォーマルな時にそんな格好すらも
出来れば避けたいと思う程には、ラフな格好ばかりが好きなのだが、
それは、堅苦しいマナーを尊重する気が無い訳ではなく、フォーマルの様な誤魔化しを出来ない、逃げ場のなき己との向き合いが必要な機会を服を着る度にするのが嫌だからなのですけどね。

ともあれ、私は今ダッフルコートを3着持っている。
いや、ホントはもっと持っていた筈。

紺のは、ショートダッフルと合わせて2着あったが、あれはどこにいったのか覚えていない。今はコーエンのミドル丈のダッフルだけだ。

茶色の古いロングダッフルコートを1着。
これは確か古着屋で500円位で買った。結構前なのでいつ買ったか思い出せない。
その時は、古着のリメイクの話を聞いて、この布でぬいぐるみでも作ろうかと夢見て買ったんだ。良く考えれば、厚手のこの布はごわごわしていて切るのも大変だし、ミシンなんかかけられる筈もない。そのままクローゼットに入れっぱなしになった。

同じく古着屋で見つけたINEDのチャコールグレーのロングダッフル。これはそろそろ3年経つ。状態が良いけど、何となくデザインが古臭い様な気がして殆んど着ていなかった。でも、悪いものじゃない。

このまま死蔵コートにするのが嫌で、試しに長女(中3)にチャコールのダッフルを着せてみた。
彼女は私より少しだけ背が高くなっていて、しかも脚の長さは彼女の方が長くて細くて濃い色のデニムが良く似合うようになっていた。


このコート着てみなよ。

彼女が袖を通すと良く似合う。
古臭い様に思えていたものが、今の彼女が着ると、全くそんなことはなかった。

「このコート、重い。」
「教室とかで脱いだら、置き場に困る」

結局それきり彼女は着ていない。


折角、着てくれる人間に渡せると思ったコートは又、クローゼットに仕舞われっぱなしになった。
さわり心地は良い布を撫でながら、やっぱりこれは重いからな、とハンガーに掛け直す。

ふと、これを長男に着せるのはどうだろうと思い付く。
息子の方が今は長女よりも背が高くなっていた。きっとこのコートはぴったりだろう。
でも、男子にこれを渡すのは惜しいとも思った。着る人間が居ないからと言っても、一日中部活のジャージを着てる息子にこのコートは。
貧乏性の思考。

隣に掛かっていた茶色のコートが目に留まる。この茶色いコートも見る度邪魔に思っていた。
これも一緒に試着させよう。背が伸びたせいか、前に渡したコートが少し丈が短くなった気がしていたし、それも私のお古。フェイクファーの衿が少し淋しくなっていた。


と、息子を説得しながらコートを渡した。
チャコールグレーのコートは何だか似合わなかった。レディースだからだろうか。
でも、茶色の古いダッフルコートの方が良く似合っていた。
こっちのコートの方が身幅が少し余裕があったがそれが良かった。もう、息子はレディースのサイズが似合わない位の身体になっていたのだな、と思った。


息子に姿見で確認させると、少しニヤニヤとした。別に返事は無かったが、自分用にしまわせた。


コーエンの紺のコートに袖を通した。
このコートは結構に気に入っていたので、汚さないように、型崩れしないように気を使って保管していた。

姿見を見ると、似合わない、と思った。
中年に似合わせるのが難しいデザインではある。

私が年を取ったのだけなんだけどね。