閉店セールに立ち寄る

元は確か国道で今は県道で、バイパスが出来てから交通量が減ったその道、の傍らにあった雑貨屋。

雑貨屋と言うと、可愛らしい店と勘違いさせてしまうが、
倉庫を店舗にして、店員は地元のおばちゃんとおばあちゃん、売り物のメインは地元の人対象の婦人服、紳士服。
それの人達の孫ら子にに与える為の学用品やら服やらお菓子やらが安価で置いてあり、高い天井で空調があまり効かず、冬に行けば決して上着は脱げない、味気ないコンクリートが床のお店。

かくゆう、私も地元のおばちゃんなので、娘息子の下着や服をたまに買った。
普段は車で10分程のショッピングセンターへ行くのだが、近場で済ませたい時に掘り出し物期待しながら自宅から近いその店を行き、そして大概はがっかりしながら帰る、
を繰り返していた。

そんな店だが、この度閉店するらしい。
今迄一度だって閉店セールをしたことがないこの店。本当に閉店。
そして今正に閉店セール中。


店内のあちこちに、「○○%off」の値札が付いた商品が並んでいて、でも店の奥の方は既にパーテーションで区切られ整理が進んでいるのが分かった。

値札を眺めていると、黒いショルダーバッグ100円で50%off
つまり50円!

と、一瞬テンションが上がるが、ビニールで出来ていて大きいリボンの付いたそれを、どう考えても私は使わない。小学生の姪に買おうか、末の娘に渡そうか、色々シュミレーションしてみて…買わないことを決めた。

そして大して安くもなっていなかったが、男性ものの下駄を自分用にレジへ持っていった。


支払いをしながらお店の人に確認して見ると、地元で一番大きな駅の…そこから歩いて15分の場所に移転するらしい。
そんな場所へは、行けないと思った。
でも、あの大きな駅の近くは土地も高いから仕方ないんだろうな。

あの駅の方なんて凄いですねぇと相槌をうつと

「でも、店舗は今より小さくなっちゃうんですよ。」と。

そうなんですかぁ、と応えながら益々行かないことを確信する。



実はこの店は多分元クラスメートの一族のものの筈なんだが。

小学生の頃、その子の名字の付いたテニスコートや、アパートがあった。この店の名前もそうだ。
あの頃は彼女の親が経営していたから、クラスメートのお父さんのお店と思ってここに立ち寄っていた。

彼女にいた筈のお兄さんが、代替わりをして、ここを畳むのを決めたのかも。
そんな事を勝手に想像した。

全て妄想ばかりで立ち寄っていたこの店はもうすぐ無くなってしまうのだ。