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夜長

貰った柿を届けに、徒歩2分。公園の脇を通る。
9時を回っていた。

遠目に、ブランコが大きく振れているのを気付く。
誰かが、ブランコに乗って漕いでいる。

公園の真ん中の一本の外灯で、ぼんやりとした光の中、ブランコを漕いでいるのは中年の女だった。
彼女の表情迄は薄暗く遠く、確認は出来ない。
ロングスカートから出ている太く短い脚が上に向かって伸ばされる瞬間を見ても、彼女が楽しんでいるかどうかは分からない。少し肌寒い中、茶色いカーディガンに覆われた丸い身体がブランコで宙に舞っている。

何となくベンチ替わりに座っているではなさそうな勢いがあった。久し振りに漕ぐブランコに、興が乗ってしまったのか。
いや、単純にブランコは私も好きだ。その気持ちは分かる。と、視線を外して足を早めた。


柿を届けたついでに、少し立ち話をする。
私は柿が苦手だから本当はもっと渡したかったが、老人ふたりには、5個が限界だろう。

そんな未練を思いながらの帰り道。
彼女はブランコに座っていた。
手元には明るい携帯が光っていて、それを覗いた背中が丸く見えた。

彼女が覗く光の中には、良い事が書いてあるだろうか。
どちらと確かめる事もないけど。


今は虫も鳴く秋だ。その夜だ。
涼しい、少し肌寒いくらいの夜に、彼女が公園の散歩を楽しんだかも知れない。

そう思えないのは私が柿を苦手なせいなだけだ。