紫陽花を食む
急に紫陽花に気がついた。
雨露に濡れる前に、夕暮れが来る前に、そこかしこの庭やフェンスの脇にから顔を出している。
まだ小さく色の足りないのもあるが、鮮やかな青を見せるものや、紫色に赤く染まったアジサイもあった。
花弁と思えるあれが、顎なのは知っている。
色は土が酸性かアルカリかによって決まると読んだ事がある。
四角く並ぶ花びらのような紫陽花。あぁ、こないだ見た、和菓子を思い出す。
いや、この花は甘くはない。薄白く緑色でまだ青にも赤にも傾いていないこれは甘味を想像出来ない。きっと食べてもクレソンの様に、青々とした味だろう。
クレソンは嫌いじゃない。
一口食べてみたくなる。
青々とした歯応えの葉を口に入るのを想像した。
小さな顎の花びらと更に小さな本当の花びら。こちらはきっと固いだろう。
食べちゃダメなんだよ、と自分をたしなめる。
毒だよ、と。
雨の降りそうな空気の中、自転車のスピードでそれらを通り過ぎる。